俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 お互い腹は減っていなかったので、珈琲だけを注文した。柳生は持って来た手紙の一部の束をテーブルの上に置いた後、「実は……」と打ち明けた。

 苅谷は耳を傾けながら相槌を打ち、話の合間に的確な質問をそれとなく入れて、口下手な柳生に助け舟を出しつつ話しを聞き進めた。

「ふうん。それは、なんとも奇妙な話だねぇ」

 すべて聞き終えると、苅谷は自身の感想を口にして手紙の束に手を伸ばした。手紙に目を通しながら、店員を呼んで二杯目の珈琲を追加注文し、ついでにチョコレートスコーンとブルーベリースコーンの二つを頼んだ。

 苅谷は、しばらく手紙を眺めていた。彼が納得して手紙を元の束状に戻した時、まるでタイミングを合わせたかのように、店員が珈琲とスコーンを持って現れた。苅谷にはチョコレートスコーンを、柳生にはブルーベリースコーンを置き、店員は空いた珈琲カップを持って立ち去っていった。

「どうすればいいのか、一体どうしてこんな手紙が届けられるのか、分からない」