彼は毎回、柳生が選考会場で土産として持たされる菓子類を狙っているのである。柳生は小さく舌打ちして「馬鹿者」と窘めた。
「俺は仕事で行くのであって、観光ではないんだぞ」
続けて軽く説教してやろうかと思ったが、岡村にはこれといった効果もないことを思い出して諦めた。短い溜息をこぼしてみたら、どっと疲労感を覚えた。もう電話を切るかと思った。
すると、電話を切られることを察知したらしい岡村が、本題は取材の原稿のことであったのだと慌てて言ってきた。
「やだなぁ先生、僕が編集長から選考の話をチラリと聞かされて、思わず食べ物のことだけで思い余って電話しちゃったなんて、そんなことあるわけないじゃないですか。僕は立派な大人ですからね。近所の小学生と駄菓子屋で、最後のチョコボーをかけて紙相撲で熱い勝負を繰り広げていたなんて、それはきっと僕の空似であって、決して会社を抜け出した僕が行っていたなんてことはなくてですね」
話すたびに墓穴を掘っていると、本人が気付かないのか不思議である。持ち前のお喋りのせいで嘘が付けない男であるので、今回の勤務中の道草についても、編集長に叱られたに違いない。
「俺は仕事で行くのであって、観光ではないんだぞ」
続けて軽く説教してやろうかと思ったが、岡村にはこれといった効果もないことを思い出して諦めた。短い溜息をこぼしてみたら、どっと疲労感を覚えた。もう電話を切るかと思った。
すると、電話を切られることを察知したらしい岡村が、本題は取材の原稿のことであったのだと慌てて言ってきた。
「やだなぁ先生、僕が編集長から選考の話をチラリと聞かされて、思わず食べ物のことだけで思い余って電話しちゃったなんて、そんなことあるわけないじゃないですか。僕は立派な大人ですからね。近所の小学生と駄菓子屋で、最後のチョコボーをかけて紙相撲で熱い勝負を繰り広げていたなんて、それはきっと僕の空似であって、決して会社を抜け出した僕が行っていたなんてことはなくてですね」
話すたびに墓穴を掘っていると、本人が気付かないのか不思議である。持ち前のお喋りのせいで嘘が付けない男であるので、今回の勤務中の道草についても、編集長に叱られたに違いない。


