俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 手紙が送られてきたのは、二人が亡くなった年からである。一通目は二人が亡くなる前の日付なのだが、それ以降のものをよく見てみると、特徴を出しているとはいえ妻の字とは違っているような気もして、初めての物も本人ではない可能性が過ぎる。

 妻と娘は死んでいて、それでも手紙は送られてきていることを考えながら、柳生は元妻からの手紙の字を、昨日と同じように電話帳の字と見比べてみた。彼が記憶しているよりも全体的にやや丸みがあり、どうも違うようにも感じた。

 娘の字については、比べられるような見本はないので不明だが、両者の手紙の文面を眺めていると、どことなく二人の書体は全体的に似ているようにも思えた。
 
 とすると、彼女達ではない別の誰かが一人で、わざわざそれぞれの県から手紙を発送していることが推測される。しかし、一体なんのために……?

 不可解な手紙についてじっくり考えてみたが、疑問以上のことは何も思いつかなかった。考え続けたことで己の中で情報の整理が追いついたのか、不意に空腹を覚えた。

 そういえば昨日はケーキの後は、何も食べていなかったと思い出した。冷蔵庫にある卵とベーコンと賞味期限間近な食パンを焼いて、軽い朝食を作った柳生は、食べながら考え続けた。