食欲が満たされると、岡村は近くの自動販売機で購入してきたらしい炭酸ジュースを飲みながら、アイドルが出演しているテレビの音楽番組を見始めた。「普段は見られないんですよねぇ」と感慨深そうに語ったが、普段から見られるという方が問題である。
岡村がテレビに映るアイドルのミニスカートを真剣に見つめている間に、柳生はリビングを出て、電話帳を確認しながら元妻の実家に電話をかけてみた。
電話番号が変わっていたら、と番号の最後を入力した時には心配になったが、受話器から問題なく発信音が鳴り始めてほっとした。
しばらくも待たずに、電話が繋がって「はい」と女性の声で応答が上がった。一瞬、どう切り出してよいのか分からなくなったものの、どうにか「柳生ですが」と戸惑いつつ述べると、向こうから「あ」とやや驚いた感じの声が返ってきた。
声は少しばかり細くなっていたが、電話の相手は、元妻の母親であった。柳生はリビングでくつろぐ岡村を警戒しつつ、単刀直入に妻と娘について尋ねてみた。
彼女の母親は困惑と小さな驚きを見せたが、ぽつりぽつりと話してくれた。話の間、柳生は少し相槌を打つ以外は言葉を発しなかった。通話時間は五分もなかったが、まるで世界が呼吸を忘れてしまったかのように、一秒ごとが重々しく感じた。
「――それは、本当ですか?」
話をすべて聞き終えた後、柳生は、まずそう訊き返していた。どうしてか、問い掛ける声が息苦しかった。彼女の母親は肯定するばかりで、否定は一切してくれなかった。
柳生が電話を終えて受話器を置いたところで、リビングから一つの落胆の叫びが上がった。
「ああああああぁぁ、とうとうアイドルのパンツは拝めませんでした……!」
そう事後報告のように言って、岡村が全力で苦悶する。リビングに戻った柳生は、いつもするように呆れて笑って見せたつもりだったが、その表情が作れているのかは自信がなかった。さっさと本社に戻れ、という普段の言葉をどうにか返した。
視線を向けた岡村が、数秒ほど変なものを食ったような顔で柳生を見た。
岡村がテレビに映るアイドルのミニスカートを真剣に見つめている間に、柳生はリビングを出て、電話帳を確認しながら元妻の実家に電話をかけてみた。
電話番号が変わっていたら、と番号の最後を入力した時には心配になったが、受話器から問題なく発信音が鳴り始めてほっとした。
しばらくも待たずに、電話が繋がって「はい」と女性の声で応答が上がった。一瞬、どう切り出してよいのか分からなくなったものの、どうにか「柳生ですが」と戸惑いつつ述べると、向こうから「あ」とやや驚いた感じの声が返ってきた。
声は少しばかり細くなっていたが、電話の相手は、元妻の母親であった。柳生はリビングでくつろぐ岡村を警戒しつつ、単刀直入に妻と娘について尋ねてみた。
彼女の母親は困惑と小さな驚きを見せたが、ぽつりぽつりと話してくれた。話の間、柳生は少し相槌を打つ以外は言葉を発しなかった。通話時間は五分もなかったが、まるで世界が呼吸を忘れてしまったかのように、一秒ごとが重々しく感じた。
「――それは、本当ですか?」
話をすべて聞き終えた後、柳生は、まずそう訊き返していた。どうしてか、問い掛ける声が息苦しかった。彼女の母親は肯定するばかりで、否定は一切してくれなかった。
柳生が電話を終えて受話器を置いたところで、リビングから一つの落胆の叫びが上がった。
「ああああああぁぁ、とうとうアイドルのパンツは拝めませんでした……!」
そう事後報告のように言って、岡村が全力で苦悶する。リビングに戻った柳生は、いつもするように呆れて笑って見せたつもりだったが、その表情が作れているのかは自信がなかった。さっさと本社に戻れ、という普段の言葉をどうにか返した。
視線を向けた岡村が、数秒ほど変なものを食ったような顔で柳生を見た。


