彼女の実家の電話番号は、ノートの最初のページに載っていた。それに対して、柳生と血縁のある者の番号は一つもない。
風の便りで、縁を切った実家の会社運営が上手くいっていることだけ知っていた。顔もろくに覚えていない父親がどうやら会長職に退いて、社長の席を長男に譲ったらしいことは、十数年前に新聞でチラリと見掛けた。両親は共に健在であったが、実家という言葉で彼が思い出すのは、セピア色の記憶に残る洋館と、他人行儀の生活風景だけだった。
柳生は、見つけ出したその電話帳を脇に置いた。まずは床に散乱したままの、紙の山の残りを片付けなければならなかった。よく分からない走り書きのメモや、レシートの大半を大雑把に掴んでゴミ袋に入れる。
その時、床が見え始めた紙類の中に、いくつもの写真が紛れこんでいることに気付いた。解像度もかなり悪い、薄っぺらで小ぶりな写真の中に、柳生は数十年前の自分の姿を見つけて、思わず手にとってじっくりと眺めてしまった。
風の便りで、縁を切った実家の会社運営が上手くいっていることだけ知っていた。顔もろくに覚えていない父親がどうやら会長職に退いて、社長の席を長男に譲ったらしいことは、十数年前に新聞でチラリと見掛けた。両親は共に健在であったが、実家という言葉で彼が思い出すのは、セピア色の記憶に残る洋館と、他人行儀の生活風景だけだった。
柳生は、見つけ出したその電話帳を脇に置いた。まずは床に散乱したままの、紙の山の残りを片付けなければならなかった。よく分からない走り書きのメモや、レシートの大半を大雑把に掴んでゴミ袋に入れる。
その時、床が見え始めた紙類の中に、いくつもの写真が紛れこんでいることに気付いた。解像度もかなり悪い、薄っぺらで小ぶりな写真の中に、柳生は数十年前の自分の姿を見つけて、思わず手にとってじっくりと眺めてしまった。


