「もう小説は、お書きにならないのですか?」
新幹線に乗り込んでしばらく経った頃、二個目の駅弁を食べていた、岡村が不意にそう言った。
上目こちらを見てくる顔はきょとんとしていて、観察眼を持っている柳生にも思惑や意図が全く読み取れなかった。何か考えがあっての質問なのだろうかと一瞬身構えたものの、普段の岡村を思い返して、その可能性はないだろうとも思った。
「緊張感のない男だな」
柳生は話をそらすように、呆れ顔で弁当を指して、それから窓の向こうへ視線を投げた。過ぎ去る東京の風景を、持ち前の顰め面でぼんやり眺める。
岡村が口をもぐもぐとさせながら、米粒のついた箸を柳生に向けた。
「僕、先生の書く話が好きなんですよ。先生をすごく尊敬していて、ちょっとしたページを任されただけでも、先生の担当になれて良かったなあって感じますもん」
「なら箸を向けるな」
こいつ、尊敬という言葉の意味を分かっているのか?
柳生が訝って視線を返す向かい側で、岡村が箸先についていた米粒に気付いて、それを口で拭った。
新幹線に乗り込んでしばらく経った頃、二個目の駅弁を食べていた、岡村が不意にそう言った。
上目こちらを見てくる顔はきょとんとしていて、観察眼を持っている柳生にも思惑や意図が全く読み取れなかった。何か考えがあっての質問なのだろうかと一瞬身構えたものの、普段の岡村を思い返して、その可能性はないだろうとも思った。
「緊張感のない男だな」
柳生は話をそらすように、呆れ顔で弁当を指して、それから窓の向こうへ視線を投げた。過ぎ去る東京の風景を、持ち前の顰め面でぼんやり眺める。
岡村が口をもぐもぐとさせながら、米粒のついた箸を柳生に向けた。
「僕、先生の書く話が好きなんですよ。先生をすごく尊敬していて、ちょっとしたページを任されただけでも、先生の担当になれて良かったなあって感じますもん」
「なら箸を向けるな」
こいつ、尊敬という言葉の意味を分かっているのか?
柳生が訝って視線を返す向かい側で、岡村が箸先についていた米粒に気付いて、それを口で拭った。


