俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

「あはは、ただの運動馬鹿なんですけどね。でも、超がつくほどいい奴なんです。純粋で真面目で、まっすぐで、彼は今時裏表もない凄い奴なんですよ。親や十歳違いの妹や、知らぬ老人にも優しくて、教師や友人を大切に思えるそんな素晴らしいところを、僕はとても尊敬しています。僕は彼の、そういったキラキラと輝く素直なところにも引かれているんです」

 出来た話し相手を喜んでいるかのように、水崎はそう言葉を続けた。

 柳生は、友人でもあり後輩でもある例のアルバイト君について、良い所をすらすらと口にした水崎には感心せずにいられなかった。人の好きそうなこの青年は、見た目だけでなく今時には珍しい、話していてなんとも気持ちの良い感じがする男だった。

 身体を半ばこちらに向け、水崎は手を使いつつ表情豊かに話し続けながら、柳生のコップの水に気を遣うことも忘れなかった。勝手知っている店だからと言って、店主の代わりに新しい水をコップに注いだりした。