柳生が店内に顔を覗かせてすぐ、先日の店主が「いらっしゃい」と陽気に声を掛けてきた。彼は店主にチラリと目を合わせ、どうも、という会釈を返して、水崎の隣二つを空けたカウンター席に腰かけた。例のアルバイト君の姿はなかった。
「今日は何にします? オススメは、辛みそラーメンかな」
店主は口角を引き上げ、自信たっぷりに言った。
どうやら前回のやりとりを覚えているらしい。柳生は一瞬、頭の上がらない気まずさを覚えたが、ややあって苦笑を返した。
「じゃあ、それをいただこう」
「ビールは?」
「いや、結構だ」
「チャーハンのセットにも出来ますが――」
そう言って、店主が壁の方へ目をやった。柳生も、つられてそちらに顔を向けた。
達筆で書かれた『セットメニュー』という項目側に、いくつかの品名が並んでいた。その中に、子供が書いたような汚い走り書きで『トマトにトマトを重ねたトマトのスイーツサラダ』というメニューが目についた。
恥ずかしくて言えそうにないそのメニューを注文する人は、はたしているのだろうかと考えながら、柳生は他の手書きメニューの案内紙に目をやった。
「…………『冷やし盛りのやっこ豆腐』をもらおう」
「今日は何にします? オススメは、辛みそラーメンかな」
店主は口角を引き上げ、自信たっぷりに言った。
どうやら前回のやりとりを覚えているらしい。柳生は一瞬、頭の上がらない気まずさを覚えたが、ややあって苦笑を返した。
「じゃあ、それをいただこう」
「ビールは?」
「いや、結構だ」
「チャーハンのセットにも出来ますが――」
そう言って、店主が壁の方へ目をやった。柳生も、つられてそちらに顔を向けた。
達筆で書かれた『セットメニュー』という項目側に、いくつかの品名が並んでいた。その中に、子供が書いたような汚い走り書きで『トマトにトマトを重ねたトマトのスイーツサラダ』というメニューが目についた。
恥ずかしくて言えそうにないそのメニューを注文する人は、はたしているのだろうかと考えながら、柳生は他の手書きメニューの案内紙に目をやった。
「…………『冷やし盛りのやっこ豆腐』をもらおう」


