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柳生が、再び裏通りのラーメン屋へ足を運んだのは、しばらくの雨が続いて、夏らしいカラリとした爽やかな青空が広がった翌週のことだった。
その日の外出は、仕上げた二本の原稿を、とある出版社の担当者に渡すだけの予定だったのだが、小説雑誌に掲載される秋号の特集ページの執筆を持ちかけられた。小説家、評論家など、様々な物書き達が紡ぎ出す言葉のテーマは『幻想』だという。
参加している面々が知っている仲ということもあり、まずは話だけでもと、応接室のソファに腰かけて長い間担当者の話を聞いていた。既に他の作家達は、書く内容も決まって作品の大筋が伝えられている状況であるようだった。
身体の底から震える恐怖体験や、暖かく終わる幻想的な愛の話を体験談として書いた小説。江戸の末期にあった、女の影にとり憑かれた男の恐ろしい結末までを描いた演舞についての考察。
顔にピタリとついて離れなくなった面に、ゆっくりと顔を食われて死んでいく女の凄まじい最期を書いた怪異小説や、パワースポットのレポートなど……
柳生が、再び裏通りのラーメン屋へ足を運んだのは、しばらくの雨が続いて、夏らしいカラリとした爽やかな青空が広がった翌週のことだった。
その日の外出は、仕上げた二本の原稿を、とある出版社の担当者に渡すだけの予定だったのだが、小説雑誌に掲載される秋号の特集ページの執筆を持ちかけられた。小説家、評論家など、様々な物書き達が紡ぎ出す言葉のテーマは『幻想』だという。
参加している面々が知っている仲ということもあり、まずは話だけでもと、応接室のソファに腰かけて長い間担当者の話を聞いていた。既に他の作家達は、書く内容も決まって作品の大筋が伝えられている状況であるようだった。
身体の底から震える恐怖体験や、暖かく終わる幻想的な愛の話を体験談として書いた小説。江戸の末期にあった、女の影にとり憑かれた男の恐ろしい結末までを描いた演舞についての考察。
顔にピタリとついて離れなくなった面に、ゆっくりと顔を食われて死んでいく女の凄まじい最期を書いた怪異小説や、パワースポットのレポートなど……


