身体は大人、心は成長期の真っただ中の大学生達にとって、当然のように『恋』という青春が彼らを夢中にさせたが、柳生はまるで違っていた。彼は年を重ねるたびに険しくなっていく自分の顔に、父の姿を重ねた。幸福な家庭を持つ自分を、想像することなんて出来なかった。
学生運動、賃金体制の問題、貧困の差と権力による様々な圧力と上下関係。彼は、当時の自分を呑み込むすべてを嫌った。本を読んでいる時だけが、彼に時間を忘れさせた。
文学という世界観が好きだったのかもしれない。大学入学早々から、そういったこともあって勉学の他は嫌気がさしていた柳生は、ふと、自分でも小説を書いてみようと思った。
様々な人間を傍観していたから、人間を書くのはそんなに難しくはなかった。人の愚かさ、汚さを生々しく表現し、言葉として紡ぐことは容易かった。そこに、読むことで得たドラマチックな思想を持った主人公やヒロインを、苦労を重ねながら作り上げた。
学生運動、賃金体制の問題、貧困の差と権力による様々な圧力と上下関係。彼は、当時の自分を呑み込むすべてを嫌った。本を読んでいる時だけが、彼に時間を忘れさせた。
文学という世界観が好きだったのかもしれない。大学入学早々から、そういったこともあって勉学の他は嫌気がさしていた柳生は、ふと、自分でも小説を書いてみようと思った。
様々な人間を傍観していたから、人間を書くのはそんなに難しくはなかった。人の愚かさ、汚さを生々しく表現し、言葉として紡ぐことは容易かった。そこに、読むことで得たドラマチックな思想を持った主人公やヒロインを、苦労を重ねながら作り上げた。


