柳生には、兄が二人いた。どちらも常に人の輪の中にいて社交的だった。長男はそのまま父の事業を引き継ぎ、次男は新たな事業を立ち上げた。二人の経営者を育てた父と母は確かに立派で、たくさんの人間が支持し尊敬もしていたが、二人の間に愛はなかった。
父よりも立派な人になりなさい、――それが母の口癖だった。二人の兄は、あの冷たい唇でそっけないお褒めの言葉を受けるだけで、頑張ればもっと愛されるものだと信じ、それは刷り込みのように二人の心に競争心を育てた。
柳生はそんな母と兄達を見て、馬鹿馬鹿しいと吐き捨て、十七になる前に形と見栄ばかりの家から出た。必要な金は自分で工面し、一人で大学も卒業した。二人の兄達は「どうしちまったんだよ」と弟を心配したが、彼を止めることはできなかった。あれから、彼らと連絡を取り合ったことは一度もない。
実家暮らしも上手くいかず、結局のところ自ら捨てたようなものだ。だから、俺がきちんとした家庭を築けるなんて思わない方がいい。
父よりも立派な人になりなさい、――それが母の口癖だった。二人の兄は、あの冷たい唇でそっけないお褒めの言葉を受けるだけで、頑張ればもっと愛されるものだと信じ、それは刷り込みのように二人の心に競争心を育てた。
柳生はそんな母と兄達を見て、馬鹿馬鹿しいと吐き捨て、十七になる前に形と見栄ばかりの家から出た。必要な金は自分で工面し、一人で大学も卒業した。二人の兄達は「どうしちまったんだよ」と弟を心配したが、彼を止めることはできなかった。あれから、彼らと連絡を取り合ったことは一度もない。
実家暮らしも上手くいかず、結局のところ自ら捨てたようなものだ。だから、俺がきちんとした家庭を築けるなんて思わない方がいい。


