彼はわざとらしく残念がって、首を横に振って見せた。
「そういったものは得意分野外だな。そんなものは、今注目を集めている売れっ子の方が断然適任だし、ああ、そうだ、ナナキ君がいるじゃないか」
「ちぇッ、そう言うと思った」
まるで少年のように、彼女は指をパチンと鳴らして露骨に悔しがる。
「知ってるでしょ。ナナキ先生は、向こうの出版社がほぼ独占していて、こっちまで回ってくる原稿って滅多にないんだから」
「仕方ないだろう。向こうが彼の才能を一番に見つけたんだ。予備選考で落としてなきゃ、今頃『孤高と鼠と男』はこっちで出版できていたかもしれないな」
「ああもう! それを言わないでよねッ。だって難しい話だったし、ウチだといまいちインパクトに欠けると思ったのよ」
唇を尖らせて抗議した彼女は、けれど認めるようにこう続けた。
「ほんと、もったいないことしたわよねぇ……」
W出版社のとある文学雑誌を任されている女編集長、曽野部(そのべ)真理(まり)は、落胆混じりに浅い息を一つ吐いた。
「そういったものは得意分野外だな。そんなものは、今注目を集めている売れっ子の方が断然適任だし、ああ、そうだ、ナナキ君がいるじゃないか」
「ちぇッ、そう言うと思った」
まるで少年のように、彼女は指をパチンと鳴らして露骨に悔しがる。
「知ってるでしょ。ナナキ先生は、向こうの出版社がほぼ独占していて、こっちまで回ってくる原稿って滅多にないんだから」
「仕方ないだろう。向こうが彼の才能を一番に見つけたんだ。予備選考で落としてなきゃ、今頃『孤高と鼠と男』はこっちで出版できていたかもしれないな」
「ああもう! それを言わないでよねッ。だって難しい話だったし、ウチだといまいちインパクトに欠けると思ったのよ」
唇を尖らせて抗議した彼女は、けれど認めるようにこう続けた。
「ほんと、もったいないことしたわよねぇ……」
W出版社のとある文学雑誌を任されている女編集長、曽野部(そのべ)真理(まり)は、落胆混じりに浅い息を一つ吐いた。