想像して、柳生は途端に口を噤んだ。たとえ離婚していなかったとしても、妻と娘と自分の三人で、仲良くどこかへ行くことはなかっただろうと思わされたからだ。二人は互いを名前で呼ぶことも、まともに顔を合わせて話すこともなくなった状態で、夫婦生活に幕を降ろしたのである。
重々しい沈黙に耐えかねたのか、藤森が身じろぎしてこう切り出した。
「あなたにお渡ししたい物があるのです」
柳生は、こうして会うことになった目的を思い出し、彼の方へ顔を向けた。泣き顔で微笑む藤森と目が合った時、不意に、最後の時まで家族として触れあい、妻に愛され娘に慕われた歳若い彼が、一瞬とても羨ましく感じた。
藤森は帽子を取ると、汗ばむ髪に空気を入れるように髪をかき上げて鞄を引き寄せた。柳生は、腹が重くなるような息苦しさを覚えて視線を落とした。
「…………あいつは、俺を怨んで、憎んで死んでいったのだろうか」
思わず、ぽつりと言葉がこぼれた。
重々しい沈黙に耐えかねたのか、藤森が身じろぎしてこう切り出した。
「あなたにお渡ししたい物があるのです」
柳生は、こうして会うことになった目的を思い出し、彼の方へ顔を向けた。泣き顔で微笑む藤森と目が合った時、不意に、最後の時まで家族として触れあい、妻に愛され娘に慕われた歳若い彼が、一瞬とても羨ましく感じた。
藤森は帽子を取ると、汗ばむ髪に空気を入れるように髪をかき上げて鞄を引き寄せた。柳生は、腹が重くなるような息苦しさを覚えて視線を落とした。
「…………あいつは、俺を怨んで、憎んで死んでいったのだろうか」
思わず、ぽつりと言葉がこぼれた。


