俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 二人の分まで、しっかり生きなきゃいけないよ――周りの人達からそう言われるたび、良心が私の胸を切り裂きました。

 あの子は、まだ高校一年生だったのです。妻だって、これからの人生を幸福に生きる権利があったはずです。それなのに神様は、どうして私だけを救い出したのでしょうか。二人が助かるというのなら、私は死の傷みや恐怖すら受け入れたのに。

 後悔は、次々に襲ってきました。

 日中問わず私は苦しみ、悲しみのどん底を這いまわりました。

 夢の中で幸福な日々の続きを見られたかと思うと、それは突如として現実の悪夢に豹変し、私はそのたび飛び起きずにはいられませんでした。日々が過ぎていくだけ二人との思い出が鮮明に蘇って、その喪失感は計り知れないほどでした。

 それでも世界は回り続けていました。季節は秋から冬へと変わり、いつの間にか刺すような冷気が、白い吐息と共に町を染め上げていました。

 一人の生活にようやく慣れ始めても、女性物のマフラーや手拭いを見ると、つい二人のことを考えてしまいます。