俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 私が捨てずに取ってある古い雑誌や本に対して文句を言わないのは、もしかしたら、そういった理由があったのかもしれません。

 妻が少し席をはずしている間に、私は娘さんと二人きりになったのを見計らって、それとなく『前の父親』について尋ねてみました。すると、娘さんはきょとんとして「頑固者だから、友達も少ない人だったよ」とだけ簡単に言いました。

 私が話の先を促すと、彼女は「そうだなあ」ともう少し考えてくれました。

「お父さんは男だから、私の気持ちを理解してくれないところもあったし、毎日忙しそうにしていて、思い出に残るようなことも特になくて。でも、厳しい人だったけど、酷いことをされたのは一度だってなかったんだよ。今こうして振り返ってみるとね、単に不器用な人だったのかなぁって、そう思うの」

 お父さん、元気にしてるかなぁ――と娘さんは呟きました。

「私、今度手紙でも出してみようかな?」

 その時、戻ってきた妻が「やめておきなさい」と強く言いました。