俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 そういえば最後に彼の新刊を読んだのは、ずっと前だと自覚してしまってからは、なんだかそわそわしたり、今日も進展なしかと一人落胆したり、気だるい眠気を覚えつつソファの上で過ごしたりしてしまいました。


 季節はそうしている間にも移ろい、娘さんは高校受験を迎えて無事に進学しました。私は管理職に落ち着いていたので、妻と過ごす時間が多くなりました。


 それは、娘さんが高校一年生になった、ある日の夕暮れのことです。
 夕食時間に帰って来る娘さんの帰宅と、夕飯の仕上がりをリビングのソファで待ちつつ古雑誌を読んでいた私が、たまらず「書かないなぁ」と呟いたところで、妻がどうしたのと尋ねてきました。

 料理の準備に忙しい彼女に相談するのは、申し訳なくも思いましたが、自分には敬愛する作家がいること、新しい作品が読みたくてたまらないのだが、連載もなく書き下ろしの一つもまだ出ていないのだ、と私は初めて溢れる想いと共に伝えました。