俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 私は家族共々認める読書家ですが、一番に尊敬している作家がいます。あたりかまわず読みまくっているイメージを持たれますし、現に彼女も娘さんも「どの作家が好きなの?」と尋ねるのではなく、「ノージャンルの活字中毒」と私のことを表現しましたが、私はずっと一人だけ、特別に追っている作者様がいるのです。

 確かに、好きな作家はたくさんいます。ミステリー、恋愛、ファンタジー、怪奇など、各ジャンルに何人もの素晴らしい作家がおりますから、私の書斎机に一番近い本棚は、彼らの特等席でした。

 面白かった本は自然とその棚に集まり、熱がようやく冷めると、新しい本と取って替わります。しかし、どんなに年月が過ぎて古くなろうとも、その本棚から決して抜けてはならない作家が一人だけいたのです。


 彼の名前は、柳生林山(やぎゅうりんざん)――私が敬愛する大作家です。

 彼のデビュー作『砂漠の花』は、読書に対する私の概念をすっかり変えてしまった作品でした。その世界感に繋がる物語『紅の雨が乾ききる丘』は最高傑作とまでいわれ、現在もその人気は絶えません。