俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 私は、しばらく女性とは縁がない日々を過ごしていましたから、まずは彼女の教えを素直に受け止めて、恋と錯覚してしまっているのかなとじっくり考えてみました。

 けれど、それは思い違いではなかったのですね。自分自身びっくりするほど、彼女への想いは、日に日に増すばかりだったのです。


 町中で彼女と偶然居合わせて、それからようやく友達からのスタートを切りました。晴れて恋人同士になったのは、翌年の春先のことです。


 彼女の娘は、真っ直ぐ相手を見る少女で、顔を合わせた時は少なからず緊張してしまいました。あの子はしばらく私を観察し、そしてニッと笑ったのです。

「いいんじゃない? それに、お母さんが決めたことだもの。私は反対しないよ」

 恋人としての短い時間を二人で、そして祭りや映画といったイベントには、自然と三人で参加しました。

 娘さんには友達も多くありましたから、たとえば祭りの場合だと会場まで一緒に行き、少しすると二手に別れてそれぞれで過ごし、帰りには合流してドライブがてら帰宅という感じだったのです。