俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 人並みに女性との付き合いはありましたが、私は誰よりも振られる数の多い男でした。自分で述べるのも情けない話なのですが、異性の友人や同僚から言わせると、私はどうも『男らしくない人間』なのだそうです。

 最近は、草食男子という言葉もありますが、それは若い男だから幾分か許される言葉であって、結婚を意識する年齢の男には、求められないとのことでした。

 私は先に語ったように、不自由なく生きてきました。大多数の男達が持つような競争心といったことが苦手で、昔から本を読み、一人で気ままな散歩をすることが好きな子供でした。特に読書は、今でも好奇心や感情を満たす最高の楽しみです。

 大学を卒業してから、ずっと一つの会社に勤めております。特に男であれば、必ず高い目標を持たされましたし、営業成績といった社内の制度に慣れることも大変苦労致しました。

 時間に余裕が持てるようになったのは、三十を過ぎた頃です。書店へ通って本を購入し、暇さえあれば読み耽る毎日は、これまでの頑張りがあったからこそです。ゆっくりできる時間に貪るように読み耽る本や文学誌は、私の最大の娯楽です。