俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

「おいコラ、岡村。今開けるから、それ以上は鳴らさんでよろしい。いや、むしろ鳴らすんじゃない、やかましい」

 そう窘めると、全く反省のない声が「は~い」と返ってきた。

 玄関を開けると、半袖パーカーを着込んだ岡村が、歳に似合わぬ満面の笑みを浮かべて立っていた。叱りつけようとした柳生は、目の前に突き出された全く季節感の読めない土産を見て「は?」と呆気に取られ、声を掛けるタイミングを逃した。

「焼き鳥買ってきましたよ!」

 ほかほかの焼き鳥と、汗を拭う岡村という組み合わせを目に留めて、柳生はなんだか馬鹿らしくなると同時に可笑しさも込み上げ、思わず苦笑をこぼした。

 すると、岡村がますます自信たっぷりに胸を張って、贅肉の多い胸元をぽんと叩いてこう言った。

「僕がすべての味付けを試食して、一番美味いやつだけを厳選して購入したので、自信があります!」

 岡村はそう言って、何故か照れ臭そうにして笑った。柳生は、汗だくの彼にシャワーをすすめたが、岡村は「腹がいっぱいなので」と珍しく断ると、原稿だけを受け取って帰っていった。