俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 そうだよ、俺はいつも偉そうにしていたが、実のところは誰よりも臆病で寂しがり屋なんだ。お前は一番に手がかかる大変な子供だったが、結局のところ、俺は誰よりもお前の成長が楽しみでもあったんだ。

 あの頃の夢を、お前がそのままに持っていて、農家の男と結婚して、孫まで生まれたと知った時、俺は、俺はどんなに……


 夢は時代と風景を変え、更に先へと続いた。ページを次々にめくっていくように、場面は断片的に曖昧な風景を作り上げて、彼を夢の世界で遊ばせた。時はいつしか現在の時間軸まで進み、彼は顔も見えない娘と向かい合っていた。

 手紙をありがとう、と、彼は顔の見えない大人になった娘に告げた。

 お前からもらった手紙は、ずっと取って置いてあるんだ。母さんは、大きな白い犬を飼ったんだってな。今よりずっと幸せそうで、俺は心から安心したんだよ。あいつは大きな家で、白い犬を飼うのが夢だって言っていたもんな。

 二人とも元気そうで、本当によかった。俺は相変わらず元気でやっているよ。そっちの親父さん達には、孫の顔は見せたのか? そうだなあ、俺の顔を見たら泣いちまうんじゃないのかなあ……
 
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