俺の名前を呼んでくれたのは、君くらいなものだった

 何故なら二人は、何年も前に死んだ。永遠に失ってしまって、もうどこを探しても見つからないのだろう。
 長らく離れていたためか、死という事実がだいぶ時間を空けて彼のもとへやって来たせいか、実感は陽炎のように儚く漂いながら、けれど次第に温度を持って柳生の心に沈み始めていた。

 改めて、己が字を綴った官製ハガキを見下ろした。空白ばかりが目立つ、そっけない文面のように思えた。

 仕事の原稿ではないのだから当然なのだろう。柳生は苅谷のアドバイスを今一度思い返して、そのまま仕上げた。届くかも分からないのに、自分の住所と名前はしっかり記載した。

 珈琲を一気に飲み干して、柳生は料金を支払って店を出た。人の流れに沿って歩きながら、駅前のポストに投函した。返事は期待しなかった。

 そもそも、彼はそのハガキに「手紙はもう送らないで欲しい」とも記載していたので、それを受け取った相手が、返事を送って来ることが想像できないでもいた。

 これで何もかも終わったのだと、柳生はそう思った。鞄に入れている手紙の束の後始末についても考えたが、結局捨てられず家まで持って帰っていた。