しばらく沈黙が続いた室内の向こうで、草原が心地よさそうに揺れていた。
デイビーは「そうか」と相槌を打ちたかったのに、言葉にする事ができなかった。認められるような形ある物なんて、必要なかったのか――喉の奥から熱いものが込み上げそうになり、その表情を隠すように口をつぐんで窓へと顔を向けた。
眩しいほど輝く月を見て、デイビーは周りの星の光が、その冷たく青白い光に覆い隠されているような印象を受けた。しばらく眺めていても、月のそばにある一際明るい星ですら霞んでいるように見えてしまう。
「あそこから見た星はね、とても美しかったよ。触れているのに浮いていて、とても温かいんだ」
オーティスはデイビーの話を聞いて、「そうか」と頷く。デイビーもまた力なく頷いた。
「でも僕は、せっかくの星を忘れてきてしまった。彼に、大事に大事に、袋にまで入れてもらったのに」
きっとあの星は、たった一つの特別なモノだった。
ちらりとデイビーを見たオーティスが、再び窓へ顔を向けてこう言った。
「彼は『またね』と言っていた。――それならきっと、彼が大事に預かっていてくれているんだろう」
デイビーは、どうにか「うん」と答えて、オーティスの手を握り返して夜空を見上げた。あの場所で、彼はまた待ち続けるのだろう。
二人が見つめる夜空で、流れ星が、静かにそっと白く輝く線を引いて落ちていった。
了
デイビーは「そうか」と相槌を打ちたかったのに、言葉にする事ができなかった。認められるような形ある物なんて、必要なかったのか――喉の奥から熱いものが込み上げそうになり、その表情を隠すように口をつぐんで窓へと顔を向けた。
眩しいほど輝く月を見て、デイビーは周りの星の光が、その冷たく青白い光に覆い隠されているような印象を受けた。しばらく眺めていても、月のそばにある一際明るい星ですら霞んでいるように見えてしまう。
「あそこから見た星はね、とても美しかったよ。触れているのに浮いていて、とても温かいんだ」
オーティスはデイビーの話を聞いて、「そうか」と頷く。デイビーもまた力なく頷いた。
「でも僕は、せっかくの星を忘れてきてしまった。彼に、大事に大事に、袋にまで入れてもらったのに」
きっとあの星は、たった一つの特別なモノだった。
ちらりとデイビーを見たオーティスが、再び窓へ顔を向けてこう言った。
「彼は『またね』と言っていた。――それならきっと、彼が大事に預かっていてくれているんだろう」
デイビーは、どうにか「うん」と答えて、オーティスの手を握り返して夜空を見上げた。あの場所で、彼はまた待ち続けるのだろう。
二人が見つめる夜空で、流れ星が、静かにそっと白く輝く線を引いて落ちていった。
了


