天空橋が降りる夜

 誰かのためにあれるような、父さんみたいな優しい人になりたい。

 デイビーがそう思ったのは、山羊の話を終え、父が家の中へと入っていったあとの事だった。ずいぶんと落ちつきを取り戻していた彼は、すぐに腹を立てる事からやめようと決心し、父と母が家の中にいる事を確認してそのまま家を出た。

 成人の儀の準備で村は活気付き、通りには荷物を持って行き交う人々や、何かを作っている男達で溢れ返っていた。

「やぁ、デイビー。とうとう明日だな」
「来年は、お前さん達もこうやって準備しなくちゃいけないぞ」
「明日は、新成人のお前達が主役だ! ぞんぶんに楽しめ!」

 父の友達の脇を挨拶しながら通り過ぎ、デイビーは成人の儀の場となる広場へと向かった。舞台となる場所には、多くの男達が集まって大工道具を持ち忙しそうに動いていた。

 舞台を組み立てている男達の顔は、真剣そのものだった。明日、主役となる十六歳の少年少女達は、待ちきれないという顔でその様子を見守っていて、当日食べられるお菓子が楽しみな子供達が、時々そんな彼らの様子を覗き込みに来ていた。