「まさか、本当にするつもりか?」
「でも……」
「いや。どうせ奴には無理さ」

 昨日、デイビーを侮辱した目が細い少年の声に、彼らは「そうだよな」と答えていつもの生活が始まった。それぞれの仕事を終えると広場に集まり、いつものように話し出した。

 しかしこの日、広間には子供だけでなく大人達の姿もあった。心配したデイビーの両親と共に、「気が散って仕事どころじゃないよ」と心配した大人達が集まり始めたのだ。

「迎えに行った方がいいのではないか」

 そんな声が出た頃、いつもは家の中で母の手伝いをしている少女達が「あっ」と声を上げた。広間に集まった村人達が振り返ると、そこには少し服を汚したデイビーが立っていた。彼の、親譲りの稲穂のような柔らかい髪にも、岩屑のようなものがついている。

 デイビーは、集まった大人達に目もくれず、瞳を輝かせると自分の両親に走り寄ってこう言った。

「父さん、母さん、僕はあの岩山へ登ったよ! ほら、この花を見てくださいッ。頂上に少しはえていたので、一本だけ持って帰って来たのです」