天空橋が降りる夜

「どうしたの、嬉しくないの?」

 そう青年が心配そうに声を掛けてくる。

 デイビーは、掌の星をしっかりと握り締めてから、彼を振り返った。

「ううん、とても嬉しいよ。僕はずっと、これが欲しかった。だから、君に袋とベルトを預けて……」

 不意に、頭に鈍痛を感じて、デイビーは心臓が大きく跳ねるような違和感によろめいた。どくん、と全身が呼応したように、頭から足先までが揺れたような気がして、困惑顔で自分の身体を見下ろす。

「そう、僕は君に預けて…………あれ? そのあと、どうしたのだろう。僕は天空橋を登るために来たのに、その前に天馬から星の鳥に乗り換えて、そうやってカゴごと下に降ろしてもらって……ああ、ひどく頭が混乱しているようだ」
「大丈夫、僕がいるよ。まずは深呼吸をしてごらん」

 デイビーは、青年に言われた通り深呼吸をした。すると、肺いっぱいに新鮮な空気が入って来て、気分が少し楽になった。

 その間に、青年はデイビーの手にあった星を取り「袋にしまっておこうね」と言って身を屈めた。まるで、自分の大切な子に言うような優しげな口調で「大切に、そぉっと、そぉっと」と続けて、デイビーの腰にあった袋に星を入れて、しっかりと袋口まで締める。