天空橋が降りる夜

 ひょろりとした長身の少年は、いつも自分の知識が豊富な事を自慢した。デイビーが「小さな牛飼いが、本なんて必要あるのだろうか」と悩んでいると、突然その日、数冊の本をデイビーに押し付けて帰っていった。その本をひどく気に入った母親が、今でも週に一度は、彼の家に本を返しては借りてくる事が続いている。

 他にも、色々とデイビーは思い出した。熱を出した時、服を汚した彼らが薬草と水を持ってきた事もあった。字がなかなか覚えられなかった頃、「字の読み書きなんてすぐにできるようになるさ」とさりげなく告げられた事もある。そして、それから、それから――……。

 デイビーは、ふっと目尻が熱くなるのを感じた。

「ああ、僕の方こそ、彼らを遠ざけていたのか」

 そう呟いた言葉が、どこまでも広い夜空へと飲みこまれて、静かに消えていく。

「皆、決して悪い子ではなかった。恥ずかしがり屋で、負けん気が強くて、成人の儀も近いのに、まだまだ子供で……でも、それは僕も同じだったのだ」

 胸に鈍い痛みを感じて、デイビーは星空を仰ぎながら悲しげに顔を歪めた。