老人に問われ、デイビーはようやくオーティスの事を思い出した。すっかり遠い昔の事のように、彼の事を思い出すのも何故か一苦労で、デイビーはもごもごと口を動かした。
「えっと、すごく立派な牛飼いの一家があって、そこにオーティスという僕と同じ年の子がいたのです。彼が先にこの梯子を見つけていたので、追い越されてしまう、と僕は心配して……だって、僕には登る事しかないのに…………」
デイビーは、言葉が続かず口をつぐんだ。
老人はしばらく黙っていたが、一度深く頷くと「そうか」と言葉をもらした。青年は、俯いたデイビーの斜め後ろで微笑み見つめている。
「競い合う相手がいるという事は、良いものだ」
しばらくして、老人が思い出すようにしてそう言った。
「きっと彼は、お前さんをライバルと見ていたのだろう。そうして、誰よりも一番、お前さんのいいところを知っている。まだ若いのになぁ。追い抜かれてしまった彼だけが、そこへ残されたのか…………わしと同じように」
「えっと、すごく立派な牛飼いの一家があって、そこにオーティスという僕と同じ年の子がいたのです。彼が先にこの梯子を見つけていたので、追い越されてしまう、と僕は心配して……だって、僕には登る事しかないのに…………」
デイビーは、言葉が続かず口をつぐんだ。
老人はしばらく黙っていたが、一度深く頷くと「そうか」と言葉をもらした。青年は、俯いたデイビーの斜め後ろで微笑み見つめている。
「競い合う相手がいるという事は、良いものだ」
しばらくして、老人が思い出すようにしてそう言った。
「きっと彼は、お前さんをライバルと見ていたのだろう。そうして、誰よりも一番、お前さんのいいところを知っている。まだ若いのになぁ。追い抜かれてしまった彼だけが、そこへ残されたのか…………わしと同じように」


