天空橋が降りる夜

 そんなデイビーの言葉を聞いて、青年がふふっと笑みをこぼした。

「そう、彼らはここで休息をとる。そうやって湖の水が下へと少し抜けた時、それに乗って隊列を組みながら地上に落ちていって……そして終わったらまた、空へと飛んで帰ってくるわけだ」
「虹を作る事が、彼らに与えられた役目の一つだからね」

 デイビーはそれを知っていたので、そう言って頷くと「さぁ、行こう」と青年に声を掛けて先へと促した。青年は、にっこりと笑って頷くと、先へと進んだ。

 登り出しながら、デイビーは降りていく虹の魚達をもう一度見やった。一瞬、ふと不思議な感覚がしたが、すぐにそれが分からなくなって先へと進む事に意識を戻した。

「早くおいでよ、デイビー」

 茶化すような青年の声が、雲の向こうへと消えていく。デイビーは「分かってるよ!」と答えたところで雲の層に頭を突っ込んでいた。雲が口の中に入ってしまうと思って反射的に口を閉じたが、身体に雲がかかる感覚はあっても、不思議と鼻や口に入って来る様子はない。