天空橋が降りる夜

 デイビーは雲の層に降ろされたが、あまりにも弾力のあるもこもことした地面に、思わずバランスを崩してしまった。疲れ切った身体はうまくバランスを保てず、彼は「ぎゃ」と短い声を上げて尻餅をついてしまう。

 それを見た青年が、途端に腹を抱えて笑い出した。

「毎回、君はそれをやるよね。好きなの?」

 そうからかわれたデイビーは、「放っておいてくれ」と唇を尖らせて言い返したところで、ふと、何度か揺れた雲の地面を見下ろした。

「雲というより、分厚い綿のベッドみたいだ」

 感想を述べて、デイビーはまた小首を傾げた。よく知っているはずなのに、まるで自分が初めて来たような感想を述べた事に疑問を覚えた。

「ずいぶん登って、くたくたになっているからなぁ」

 疲れていた事を思い出して、きっとそうなのかもしれないと思う。

 続いて深呼吸してみると、極上とも呼べる美味しい空気が肺に入って来て、途端にデイビーの疑問はすべて吹き飛んだ。彼はほうっと息をつくと、「心地いいなぁ」と呟いて雲の上に横になった。ふわふわと弾力のある雲の地面は、疲れた身体をそっと包み込むようにして優しかった。