天空橋が降りる夜

 青年は「もう少しだよ」とデイビーに告げ、先に雲の中へと見えなくなった。一人取り残されたデイビーは、すっかり重くなった身体を引き上げるように腕を伸ばし、するするっと上がっていった青年のあとを必死になって追った。

 頭が雲に差しかかった時、触れた頭から、すうっと重みが抜けたのをデイビーは感じた。真っ白な雲はひんやりと冷たくて、体が入っていくごとに汗が消えていくのが分かった。

 視界は真っ白だった。手元の梯子以外は何も見えなくなってしまったが、デイビーは軽くなった身体を最後の力で上へ上へと持ち上げていった。

 すると、前触れもなく青年の手が上から現れた。「お疲れ様」と声がしたと思うと、その手はデイビーの小さく細い手を掴み、軽々と上へ引っぱり上げてくれる。

 突然、雲の層が開けて、デイビーは白と青の眩しさを感じて一度目を細めた。彼を片手で引き上げた青年は、疲れ一つ見えない顔でにっこりとデイビーに微笑みかける。

「さぁ、水分補給と行こうか」
「うん、是非そうしたいね」