天空橋が降りる夜

 一段、二段、デイビーは順調に梯子を登っていった。すっかり遠くなっていた青年が、笑いながら「大丈夫かい」とちっとも心配していない声を下に落としてくる。デイビーは「平気さ」と答えて、落ちないようにしっかりと梯子に手足を置きながら登り続けた。

 だいぶ登ったところで、少し疲れたデイビーは、足を止めて下へと目を落とした。緑の淡い光りを灯した草原が、地上で光る波を静かに作り上げているのが見えた。

 彼は額に汗が浮かぶのを感じたが、拭う事なく目を上へと戻した。随分先で立ち止まっている青年を見やって、また一段一段登り始める。大分手が疲れてきたので「これはまずい」と思ってデイビーは登る速度を上げた。

 どのぐらい登ったのだろうか。雲が大分近くなっているところまで来た時、デイビーの身体はとても疲労していた。身体中の筋肉が軋み、気を抜くと「下まで落ちていくのでは」という危機感も覚えた。喉もひどく渇き、全身の血が沸騰しているように熱く感じ、時々額から流れてくる汗が目に入って痛い思をした。