天空橋が降りる夜

 雲の中から降りて来たのは、星を砕いて混ぜたように光り輝く白銀の梯子だった。それは音もなく草原に降り立つと、しっかりと土台を固定するように土へと打ちこまれた。

 普通ならばひどい衝撃音が上がるはずなのに、二人の耳に聞こえてきたのは、シャン、という音楽のような美しい響きだけだった。

「さぁ、行こう」

 デイビーが言うと、青年が先に梯子に手を掛けて「よし行こう」と返した。

「ついてこられるかな?」

 そう茶化すように振り返った青年に、デイビーは「今度こそ大丈夫さ」と強気で答えた。

 青年は肩をすくめるようにして笑い、するすると梯子を登り始めた。靴が触れる音もなく登っていった彼に続いて、デイビーも白銀の梯子に手を掛けた。

 まるで、夜風に触れているようだ、とデイビーは思った。

 心地よい冷たさがあって、白銀の梯子は手足に吸いつくような安定感がある。

 きらきらと光を放つその梯子をじっと見つめていると、それが本当に星の欠片で出来ている事が思い出された。何故かデイビーはそうだと知っていて、彼は希望を胸に梯子へと第一歩目を踏み出した。