天空橋が降りる夜

「ああ、神様。あなたまでも、僕を見てはくれないのですか! 僕はここにいます! 僕はここにいるのですよ!」

 家が見える場所でようやく足を止めると、デイビーは肩で荒い呼吸をしながら我が家を見つめた。身体中のどこよりも目が熱くなり、思わず鼻をすすった彼の前で、草原が穏やかに揺れる。

 こんなにも悩んだ日はなかった。忙しそうに服を縫う合間、パッと袋を渡したデイビーに母は少し驚いたように尋ねた。

「走って来たの?」
「えっ。あ、その……明日が楽しみで、興奮を鎮めようとしただけだよ」

 デイビーはそう誤魔化すと、何をするわけでもないのに外へと出た。

 そのまま家の後ろに腰かけて、数頭の牛が美味しそうに草を食べているのを眺めた。胸が苦しくなる事ばかり考えてしまい、しばらくすると牛を見る事も止めてしまっていた。

「他に、僕が持っているものは何かあるだろうか」

 デイビーは呟き、項垂れそうになる頭をどうにか持ち上げた。頭が重く、泣いてもいないのに瞼が腫れているように感じた。