だからデイビーは、自分の唯一の特技を奪われないようにと必死になり、オーティスもまた「あんな奴に負けてたまるか」という表情で、二人は村内で競い続けあった。

 そんなある夏の暮れ、秋に成人の日を控えた頃の事。

 男の子達が週に一度、村長の話を聞くために集まる広場で、ある騒ぎが起こった。

 そこにある村一番の巨木で、木登り名人の名をかけてデイビーとオーティスが競い合ったのだ。巨木の下には、オーティスばかりを応援する陽気な少年達が集まっていた。その後ろで小さな男の子達が、はらはらしたように二人を見守っていた。

 村長の家の、三倍以上の高さがある巨木の頂上に着いたのは、デイビーが先だった。そのすぐ後にオーティスが辿り着いて、下から大きな歓声が上がった。

「僕が一番だったぞ」

 デイビーは、自分に文句を言っていた同じ年頃の少年達にそう叫んだ。すると上から主張したデイビーに向かって、下からは冷やかしに近い声が上がり出した。