天空橋が降りる夜

「それだけじゃない。更に登ると、身の丈ほどしかない木がどこまでも広がっていて、宝石のように美しい青い実が成っていると聞く」
「一番上まで行くと、輝く美しい星を手に取る事が出来るらしい」

 デイビーは驚いて、もう少しで持っていた袋を落としてしまうところだった。

「そんなところがあるとは、知らなかった」

 思わずそう呟いたデイビーに、ひょろっとした長身の少年が得意げに言う。

「そりゃあ、本物の登り名人を決める事が少なくなってきたからさ。大昔は、村全体で天空橋の競技を見守ったと聞くぞ」

 彼はそう言うと、村一番の知識を持つと言われている自分の父を自慢し始めた。天空橋に挑戦した様子が描かれた古い原画も、彼の家にはあるという。

「じゃあ、そこへ僕が登れたら、君達は今度こそ僕を認めてくれるのかい?」
「ああ、そうだとも」

 歯が飛び出た少年が、得意げに胸を張ってそう答えた。そもそも仕事熱心でもあるデイビーは、是非登ってみたいという願望が芽生え「それはどこにあるの」と続けて尋ねた。