天空橋が降りる夜

「岩山も、確かにすごいかもしれないが、君は【天空橋(てんくうばし)】を知らないのかい。岩山なんて、本物の登り名人からしたら、段差を飛び越えるようなものさ」

 その少年の意見を肯定するように、他の少年達もさも当然と笑って同意してきた。オーティスは黙ったままデイビーを見つめていたが、デイビーは続いて、次に口を開いた少年へと目を向けていた。

「なんだいそれ?」
「天空橋は有名だぞ」
「有名? それは本当なのかい?」
「はぁ、やれやれ。それを知らないなんて、なぁ?」

 思わず顔を顰めたデイビーに対して、少年達は一度顔を見合わせると、ニヤリとして口々にこう得意げに話し出した。

「先々代の村長は、一番の登り名人だったと有名だが、その頃は沢山の登り名人がいてな。だから天空橋で競ったというのは、有名な話だ。お前さんは知らないのかい?」
「天からの橋を登っていくのだよ」
「雲を突き抜けた先には、どんな疲労をも吹き飛ばす美しい水があると聞く」