十六歳を迎えるデイビーは、村一番の登り名人だった。

 たった一つの山と、幹がしっかりとした太い木々が、少しあるばかりの小さな村の端。そこにぽつりとある小屋に、小さな牛飼い業を営む両親と共に彼は暮らしていた。

 彼は、成人の儀を迎える十六歳にしては細く華奢だった。数少ない同じ年頃の少年達からは「へろへろとして、今にも風に倒れんばかりの木だ」と馬鹿にされていた。

 それでも、村の大切な仕事の一つである、木の実を取る仕事ではいつも一番だった。少年達は競うように袋を抱えて木に登ったが、デイビーほど高く上り、また彼ほど立派な実を、袋いっぱいに入れて戻って来る事は出来なかった。

 デイビーはそれが誇らしくて、いつも「身体が細くて小さいから出来る事さ」と自慢した。しかし、村一番の牛飼いの息子で、少年達の中でも一番たくましいオーティスに会うと、そんな彼の口も閉じてしまう。

 オーティスもまた、この村の若者達の仕事である木の実を取る作業が上手だった。たくましい身体の重さなど感じないように、すいすいと木に登っていけた。