「生徒会は学園の頭脳、風紀はその従犬なのですから、訪問くらい問題にはならないのでは?」
「口を挟むな、副会長。ちなみに風紀委員会は『犬』じゃねぇ」

 睨みつけると、レオンの冷ややかな眼差しが不快感を浮かべた。

 そういえば、健康診断の際に彼を撒いたことが思い出された。ここは切り上げた方がいいと判断して即、サードはレオンの反論が始まる前にと思って立ち上がっていた。

「もう帰るの?」

 ユーリスが、そう声を掛けてきた。サードは、視線も寄越さず「ああ」と答えて歩き出す。

 すると前もって用意していたのか、ソーマが「部員のみんなで食べてッ」と菓子を詰めた複数の袋を差し出してきた。勢いよく渡されてしまい、断れずに受け取ってしまった。

「ほんと美味しいクッキーだから、戻ったあとでもいいから食べてみてください」

 言いながら、ソーマが後輩らしくペコッと頭を下げる。

 変な奴だ。律儀とでも言うのだろうか。不思議に思いながらその様子を目に留めていたサードは、よく分からなくなって首を傾げ、ひとまずは「ありがとう」と伝えた。

「じゃあな」

 そう言って生徒会室を出た後、真っすぐ風紀委員室に戻った。

 エミルが高評価していた苺ジャムのクッキーを一枚つまんでみると、確かに驚くほど美味しかった。他の種類のクッキーも一通りつまんでみたが、飽きない味だった。

 午後にやってきたリューたちに「生徒会のやつらにもらった」と菓子を手渡すと驚かれた。けれどそのクッキーは、「まぁ理由はいっか」と言うくらい全員に大好評だった。