「他のことは訊いたんだよ。生肉とかじゃなくて専用のごはんがあるだとか、それから魚を食べるんだろ? あ。そういや『猫ごはん』って、どうやって作るんだろうな?」
「に~……」
「にょ、にょにょぅ……?」
「うーん。俺、知らないことが沢山あるんだよなぁ」

 何気なく呟いた言葉が、すとんと胸に落ちてきた。どうしてか、ふと、「君が恐れを知らないのは、守りたいものも、未来もないからだ」と言った理事長の声が耳元に蘇った。

 サードは金色の仔猫を抱えて、腹に乗せるようして横になった。

 もうすぐ死んでしまうのだから、別に知る必要はないのだ。それなのに、そもそも疑問があれば、任務に関係のない事までスミラギに訊いてしまうのは、どうしてだろう?

 灰色の仔猫が視界の端に映り込み、サードはつられたようにそちらを見て、その小さな頭を撫でた。癒されるはずなのに、なぜか笑顔は出てこなかった。

「……なぁ、猫。お前は眩しいこの世界で生まれたんだろう?」