ソーマは、白騎士と呼ばれる歴史ある伯爵家の嫡男だ。やや華奢でありながら、騎士家系らしく鍛えられた身体をしており、美形揃いの生徒会の中では、唯一平凡寄りの優しい顔立ちをしていた。灰色の髪と鳶色の瞳も目立たず、苦労人そうな気配が漂う少年だった。

 一年間ロイたちに迷惑をかけられていたサードとしては、ソーマは唯一性格に問題が見られない、親しみすら覚えるような生徒会役員だった。思わず飴の一つでも手渡して「苦労してんだな」と話しかけてやりたい気持ちにかられるが、それは『風紀委員長らしくない』ので、実践には移していない。

 そこまで考えたところで、サードはふと、周囲の生徒たちから棘のある視線を向けられていることに気付いた。「よくも会長様と」「あんなに近く会長補佐様のそばに」と呟区声が聞こえてきて、強い嫉妬の眼差しが全身に突き刺さって頭が痛くなった。

 この学園に来るまで信じられなかったのだが、女生徒のいないここでは、男同士の恋愛が当たり前のようにあるらしい。その中でも、生徒会の人間は「恋人にしたい」「抱かれたい」ほどの人気を集めている――のだとか。