前もって謝罪し、驚くロイのシャツの襟に手を突っ込んだ。手に触れたネックレス・チェーンを掴み、勢いのまま引っ張り上げる。

 留め金が破壊される音が上がり、ロイが痛みに小さく顔を顰めた。

 引きずり出してみたそれは、金のチェーンの先に薄いメダル状の装飾品がついていた。古い時代に作られたそれは、凹凸によって絵柄が浮かび上がるよう仕上げられており、剣と盾で出来た『皇帝』の家紋が描かれている。

 一連の様子を見ていた生徒たちが、ポカンと間の抜けたような表情を浮かべて静まり返る。風紀部員も教員たちも、予想外の登場と行動に驚いてサードを見つめていた。

「悪ぃな、これはもらって行くぜ」
「――何に使うつもりだ?」

 ロイに静かに睨み上げられ、サードは「意外に冷静なんだな」と首を傾げた。もっと驚かれるか、罵倒されるかといった反応を予想していただけに、少し拍子抜けしてしまう。

 騎士の一人が「発動まで残り二十三秒」と急かすような声を上げた。サードは、振り回されてばかりだった生徒会長(かれ)に、最後の最後で仕返しが出来たような満足感を覚えて、風紀委員長ではない素の陽気な表情で笑い返した。


「これから悪魔退治をするんだよ、会長。『俺はコレを返してやれない』から、事が終わったら、回収してくれた誰かから受け取ってくれ――んじゃ、ここで『さよなら』だ」


 魔術師たちの読み上げる呪文を背景に、サードの言葉を聞いて傍観に回っていた生徒たちがざわめき始めた。

「なんで、あの元戦闘奴隷があそこにいるんだ?」
「悪魔退治ってなんだよ」
「一体、何がどうなっている?」