ありもしない将来なんて心底どうでもいい。しかし、今ここでそんな態度を出してしまうと『サード・サリファン』の設定に誤差が生じてしまう。

 実に面倒臭いが、受けた指示の『設定』には沿わなければならない。何せ『風紀委員長サード・サリファン』は、育て親のために高い目標を持ち、身分や権力に屈しない強い精神を持った生徒、という設定になっているからだ。

 態度や言葉使いが荒いことは、元戦闘用奴隷という嘘設定がカバーしてくれているので、後はやる気のなさを悟られないよう気をつければいい。……とはいえ、サードとしてはそこが苦行でもあるが。

 そもそも、堂々と正義を押し通すような生徒像ってのが分からん。手渡された『設定書』に記載されていた説明書きについては、今でも疑問が拭えない。

 そのうえ風紀委員長の就任挨拶の時、裏の人間から直前に手渡された原稿も最悪だった。サリファン子爵を尊敬している、という文面に「その設定は無理があるだろ」、「自分の性格でそれを演じるのは無理なのでは……」と早々に手が震えた。