「ちょっ、どうしたの、サード君」
「そんなに慌てて、どうかしたんですか?」
「悪ぃ、ちょっと急ぐから」
一瞬、チラリと目があった時に、ソーマの顔が僅かに怯えを滲ませたような気がした。なんだか、彼に殺気立った眼を見られることに、よく分からない抵抗を覚えて、サードは反射的に顔をそらし階段を下った。
人のいなくなった職員室を通り過ぎ、保健室の扉の前で足を止めた。扉には『準備中』のプレートが掛けられていたが、中からは複数の人の気配がしていた。
「開けてもいいか」
扉越しに小さく声を掛けると、内側から「どうぞ」と反応があった。
室内に入ったサードは、そこにスミラギ以外の人間がいることに気付いて、後ろ手でゆっくり扉を閉めた。警備室の制服を身にまとった二人の諜報部員が、彼と揃ってこちらを見つめ返してきた。
「例の『月食』が始まるんだろ?」
「さがに早いですね。どうやら今期では、見事な日食が見られそうです。記録にはどれも『月と太陽が同時に存在する短い時刻』となっていたので、てっきり夕刻前あたりかと踏んでいましたが。――予測では、正午過ぎには太陽が欠け始めます」
「そんなに慌てて、どうかしたんですか?」
「悪ぃ、ちょっと急ぐから」
一瞬、チラリと目があった時に、ソーマの顔が僅かに怯えを滲ませたような気がした。なんだか、彼に殺気立った眼を見られることに、よく分からない抵抗を覚えて、サードは反射的に顔をそらし階段を下った。
人のいなくなった職員室を通り過ぎ、保健室の扉の前で足を止めた。扉には『準備中』のプレートが掛けられていたが、中からは複数の人の気配がしていた。
「開けてもいいか」
扉越しに小さく声を掛けると、内側から「どうぞ」と反応があった。
室内に入ったサードは、そこにスミラギ以外の人間がいることに気付いて、後ろ手でゆっくり扉を閉めた。警備室の制服を身にまとった二人の諜報部員が、彼と揃ってこちらを見つめ返してきた。
「例の『月食』が始まるんだろ?」
「さがに早いですね。どうやら今期では、見事な日食が見られそうです。記録にはどれも『月と太陽が同時に存在する短い時刻』となっていたので、てっきり夕刻前あたりかと踏んでいましたが。――予測では、正午過ぎには太陽が欠け始めます」