「サード君って、意外と顔に出るタイプなんだろうなぁ、とか?」
「なんだそりゃ」
「一人で百面相していたぞ」

 ロイが珈琲カップを持ち上げ、にやりとしてそう言った。特に表情を変えた覚えはない、という強い意思を込めて、サードはロイを睨み返した。

 その時――

「あなたは、月食と共に現れる『赤い悪魔』との戦いは知っていますか?」

 唐突にレオンから掛けられた言葉に、サードは危うく咽そうになった。

 百年越しに、この学園で繰り返されている殺し合いは、月食で月が赤く染まる事から『赤い悪魔』という呼ばれ方もされていた。悪魔の目が赤いことも由来しているらしいのだが、この国では珍しい色というだけで忌みの対象ではない。

 サードは、どう反応すればいいのか判断出来ないまま困惑した。すると、ロイが足を組みかえながら「隠す必要はない」と、なんでもないような口調で言う。

「サリファン子爵は、元を辿れば聖騎士の家系の者だろう。血は繋がっていないとはいえ、彼に他の子がいない今、養子のお前が第一子にあたる。悪魔との戦いは代々親から子へ伝承されているのだから、当然、話ぐらいは聞いているだろう?」