その実は、ジュースよりも濃厚で、甘いながら酸味があって美味だった。苺にほんのりついた白いクリームも、見た目の奇怪さに反して、溶けるように甘いことに内心驚いてしまう。

 続いて口に入れてみたショートケーキは、ふわふわと溶けるように甘くて、嗅いだこともない濃厚な匂いが鼻孔まで広がるのを感じた。口の中で、全てが蕩けるように美味しい。

 不意に、「考えるな」「欲張るな」と言っていたトム・サリファンの言葉が脳裏を過ぎった。仏頂面が基本仕様の彼は、たびたび「お前のためだ、馬鹿みたいに笑うな」「今のうちに人間みたいな思考は捨てていけ」と叱責したりした。

 そのたびにサードは「死人じゃないんだから、それは無理」と笑い返して、彼をおちょくった。若干丸身を帯びた大きな身体で、トム・サリファンが雄叫びを上げて追い駆けてくるのが、可笑しかった。

 本当は、彼がどんな人間であるのかは分かっていた。

 ある日、飲み比べをして酔い潰れた彼が「欲が出たら、最期に辛いのはお前の方だ」と寝言のように呟いた言葉が、不器用な彼の行動の理由を物語っていた。でもサードは、それでも知らない振りをして馬鹿を続けた。