水族館に、映画館に、遊園地。

 たがが外れたように遠出をしまくっていたのは、きっと、割り切れたからだ。お互いに色々と。



 その日は、隣町に最近新しくできたショッピングモールへ来ていた。

 私服姿の彼女と休日に会うことにようやく慣れてきていた頃で、要するに、僕たちの仲がだいぶ深いものになっていることを意味した。



「あ、ねえあそこのお店、すごいおしゃれだね……」
「行ってみる?」



 学校以外の場所で彼女と会うのは、僕にとって、すごく新鮮だった。

 それはやはり、彼女を――晴音《はるね》を、僕がきちんと“彼女”として認識しだしたからなのだろう。

 晴音は、誰が見ても、明るくて魅力的な人だった。



「わぁ、すっごい綺麗……っ」



 思わずといったため息をつく晴音に、僕は自然と口元がゆるむ。


 可愛い。
 その繊細なイヤリングよりも、君の方がずっと、何倍も綺麗だよ。


 不安定な特別(とき)に、僕は意外なほど、後戻りができなくなってしまうほど、のめり込んでしまっていた。
 はまってしまって、いたんだ。



「レジ、早く行こう」
「えっ?」
「僕が買う。晴音にそれ、早く付けてほしいから」



 硬直する晴音の手から、向日葵の形をしたそれをそっと摘んで、そそくさとレジに向かう。


 慣れないことは言うべきじゃないし、するべきじゃない。
 そんな教訓を教えてくれたのも、思えば君が初めてだったね。