それからしばらくの時が経った。
 店の中にはナナシが汚部屋の中で一人、座布団の上に座り本を読んでいる姿。

 本を楽しんでいると、何かに気づきドアへと目線を向けた。

「──おや。依頼人が来たようですね」

 ナナシは本をパタンと閉じ、床に置く。
 口元には歪な笑みが浮かんでおり、赤く光っている瞳は、楽しげにドアへと向けられる。

「次はどんな依頼でしょうか。楽しみですねぇ〜」