座り込み青い顔を浮かべている琳寧に、彼は優しい微笑みを向けた。
その表情と言葉に彼女は恐怖を感じ、涙がとめどなく流れ、口は震えて声が出ない。
逃げ出そうと立ち上がろうとしても、腰が抜けて立つ事が出来ず、体を引きずって逃げるしかない。
「おやおや、そんなに怖がってしまって。可哀想に……。大丈夫ですよ。直ぐ、楽にしてあげますから」
彼女の様子を楽しむように見ているナナシは、ゆっくりと近付いた。
「さて、このままだと苦しいでしょう。早く楽にしてあげますから、その場に止まってください」
琳寧は地面を強く握り、汗が流れ落ちる。歯を食いしばり、目は憎しみのあまり充血していた。
「なんで、なんで私達が。悪いのはあの男なのに……!」
「最終的にはそうですね。ですが、それを見抜けなかったのは貴方自身かと思いますよ?」
彼は琳寧の前に移動し片膝をつき、彼女の顎を掴み、無理やり目を合わせた。
「哀れな人間よ。そろそろ浄化させてもらうぞ。お前の大事な、その赤い炎を──」
ナナシが口にした瞬間、琳寧の足元が青く渦を巻くように燃え始めた。
「い、いや……」
どんどん青い炎が琳寧を包み込む。
「やめ……お願いします……お願い……何でもするから……だから……助けて!」
涙と土で汚れた顔をナナシに向け手を伸ばす。だが、その手は届かず動きを止める。
その理由は、ナナシの姿が先程と異なっていたからだ。
耳は狐のように尖っており、お尻からは九本の尻尾。爪は鋭く尖り、口の隙間からは牙が見えていた。
その姿は、この世で有名な妖。九尾の狐だった。
ナナシの変貌に、琳寧は震えるしかできない。だが、地面から現れた炎は彼女の心境など気にせずどんどん包み込む。
「──ぁぁぁああ!! 熱い! 熱い熱い熱い熱いあついあついあついアツイアツイアツイアツイアツイ!! 許さない!!! 私じゃない!! あの男がぁぁああ!! 殺してやる!! 殺してやる殺してやる殺してやるぅぅぅううあああああああ!!!」
琳寧の悲痛の声は数分続き、そして──今。聞こえなくなった。
ナナシはその青く輝いている炎を、赤い瞳で見続けていた。
『貴方の依頼はやり遂げました』
小さく呟き、ナナシはロングコートを翻し、薄笑を浮かべながら闇の中へと消えていった。
森の中には赤く染った地面や樹木。付近には、赤いブレスレットだけが残されていた。
その表情と言葉に彼女は恐怖を感じ、涙がとめどなく流れ、口は震えて声が出ない。
逃げ出そうと立ち上がろうとしても、腰が抜けて立つ事が出来ず、体を引きずって逃げるしかない。
「おやおや、そんなに怖がってしまって。可哀想に……。大丈夫ですよ。直ぐ、楽にしてあげますから」
彼女の様子を楽しむように見ているナナシは、ゆっくりと近付いた。
「さて、このままだと苦しいでしょう。早く楽にしてあげますから、その場に止まってください」
琳寧は地面を強く握り、汗が流れ落ちる。歯を食いしばり、目は憎しみのあまり充血していた。
「なんで、なんで私達が。悪いのはあの男なのに……!」
「最終的にはそうですね。ですが、それを見抜けなかったのは貴方自身かと思いますよ?」
彼は琳寧の前に移動し片膝をつき、彼女の顎を掴み、無理やり目を合わせた。
「哀れな人間よ。そろそろ浄化させてもらうぞ。お前の大事な、その赤い炎を──」
ナナシが口にした瞬間、琳寧の足元が青く渦を巻くように燃え始めた。
「い、いや……」
どんどん青い炎が琳寧を包み込む。
「やめ……お願いします……お願い……何でもするから……だから……助けて!」
涙と土で汚れた顔をナナシに向け手を伸ばす。だが、その手は届かず動きを止める。
その理由は、ナナシの姿が先程と異なっていたからだ。
耳は狐のように尖っており、お尻からは九本の尻尾。爪は鋭く尖り、口の隙間からは牙が見えていた。
その姿は、この世で有名な妖。九尾の狐だった。
ナナシの変貌に、琳寧は震えるしかできない。だが、地面から現れた炎は彼女の心境など気にせずどんどん包み込む。
「──ぁぁぁああ!! 熱い! 熱い熱い熱い熱いあついあついあついアツイアツイアツイアツイアツイ!! 許さない!!! 私じゃない!! あの男がぁぁああ!! 殺してやる!! 殺してやる殺してやる殺してやるぅぅぅううあああああああ!!!」
琳寧の悲痛の声は数分続き、そして──今。聞こえなくなった。
ナナシはその青く輝いている炎を、赤い瞳で見続けていた。
『貴方の依頼はやり遂げました』
小さく呟き、ナナシはロングコートを翻し、薄笑を浮かべながら闇の中へと消えていった。
森の中には赤く染った地面や樹木。付近には、赤いブレスレットだけが残されていた。