「適当に座ってね~」
と、案内されたのは第三騎士団長の執務室。第三騎士団は王城内警備、なので執務室は王城内にある。
薄い水色を基調とした部屋で、白い家具が上品さを際立たせている。どこぞのお嬢様の部屋のようだ。
「失礼します。とても明るくてシックなお部屋ですね」
「いや~ん、ありがとう。団長室ってむさいイメージしかないじゃない? ちょっと変えたのよ~」
ちょっとって、あなた。これは大改造したよね? ウチと大違いなんですけど。
「センスがとても良くいらっしゃる。羨ましいです」
「そう? ラモンも自分の好きなように変えれば良いのよ。だって、自分の執務室よ。一日の大半居るんだから心地よさを重視した方がいいわよ」
「ははは。そうですね、追々やって行きます」
今はそんな余裕はない。てか、私財でこれだけ用意はまず無理だな。ユーグさんって上位貴族なんじゃない? 聞くのが怖いよ。私はなんせ貧乏子爵だし。
「ふふふ。それより、さっきは第六に言い返していたじゃない。見直したわ」
「あ~。言い返せていたかどうかは… 少しは溜飲が下がったかも知れないですが、まだまだです」
「いいえ、言い返したのがすごいのよ。しかもあいつでしょう? みんな心の中では見直したと思うわよ」
「それなら、少しは成功でしょうか?」
「成功? あぁ、そうね。団長としては合格ね」
ユーグさんはウィンクしたあとお茶を勧めてくれた。
「それより、これからね。第七でやって行けそう?」
「そうですね。皆、比較的協力的ですし、何よりドーンが居ますので」
「そう? 団長同士、何か手助け出来ればいいんだけど? 何かある?」
ん? ユーグさん、こんなに親切でちょっといいの? 初対面だよ?
う~ん。あんまりガツガツ行かず様子見する?
「では、今までの第七の印象など教えて欲しいです」
「今までねぇ~。今までは左遷先? って言うの? プライドや爵位は高いけど中身がないやつをお飾り的に送ってはクビにするって感じかしら? 第七の子達って貴族にアレルギーがあるのか、決まって団長を干しにかかっていたわ」
「貴族アレルギーですか? 初めて聞きました」
「ふふ。何ていうか、第七の団長になるやつって貴族を鼻にかけたり、給料だけぶんどってふんぞり返ってたりね。仕事が出来ないって言うより、しないやつばっかりだったの。それに平民騎士が多いでしょう? それも踏まえて貴族に対して変な見方になっているのは確かよ」
仕事しない上司。部下にしたら悪夢だね。それがずっと続いていたのか…
「それは… 第七の騎士達は不びんでしたね。そっかぁ」
「不びんって… あなたも貴族の端くれよね? 第七って聞いて嫌じゃなかったの?」
中身はこの世界に生まれたての異世界人です! とは言えない。
「元々は中位騎士になりたてで、爵位も低い貧乏貴族ですので。それに第七に関しては『ややこしいらしい』としか噂でしか耳にしませんでしたから」
「確か、第二に居たのよね?」
「はい。城下町の警備です。城門とは近いようで接点がなかったので」
「そっか… ラモンは第二出身か。じゃぁ、さっきケインがヤキモキしていたのはそのせいね。ふふ」
「ケイン団長ですか?」
そう言えば、さっきの会議室で目は合ったけど特に話したりしてないな。団を移籍してから一回も会ってないような…
「ラモン、ケインよ。今はもう同じ団長なんだから」
「そうですね… すみません。格上の方達ばかりなので慣れなくて」
「ラモンが第六とやり合ってた時に、ケインがハラハラしてたのよ。ぷぷぷ、父親みたいだったわ、あのゴリラ」
「ゴリラって。そうですか、今度挨拶して来ます。うれしい事を教えて下さりありがとうございます」
「素直でいいわね~、はぁ~。でもこの先心配になるわね、この純真さが」
私が??? になっているとドーンが一歩前に出た。
「ご歓談中失礼します。ユーグ殿、そこは私が居ますのでご心配なく」
「おっと、そうだったわね。ドーンが居ればそこら辺の雑魚は問題ないわね。何せ『稲妻ブレーン』様だものね?」
『稲妻ブレーン』!!! 何じゃそら?
「ぷっ! 稲妻ブレーン! 何その二つ名!」
笑っちゃいけないが、笑ってしまう。い、いなずまぶれーんって。
「そこ笑う所じゃないわよ、変な子ねぇ。この通り名は字の如くよ。稲妻のように瞬く間に作戦を思いつく、戦場で即座に対応する騎士団の頭脳に付いた名よ? とっても名誉な名なのよ!」
「そ、それはすごいですね。ドーンのありがた味が増しました。ぷぷ」
「もう! ちゃんとわかってるの? ドーンを頼りにするのよ!」
「それは重々。今では無くてはならない存在ですので」
ドーンは私が笑った事などお構いなしに、ニコニコしている。
「ドーンも大変ね。この子のお世話」
「はい、毎日が楽しくて仕方がありません」
「ふ~。この上司にしてこの部下か… 陛下はどこまでお見通しなのかしら」
「それは神の采配かと」
「ふふふ、言うわね。あなた陛下のこと嫌ってなかった?」
「はて? 陛下を嫌うなど、畏れ多い事ですな」
「ふん、狸ね」
二人の大人な会話を余所に、私はスイーツを頬張る。
今、話に入ったら火傷しそうで怖い。だって、二人共顔が笑ってても目が笑っていない。途中から寒気がし出したしね。
もぐもぐもぐ。もうね、両頬を膨らませたリス状態だよ。
私は何も知りませんよっと。
と、案内されたのは第三騎士団長の執務室。第三騎士団は王城内警備、なので執務室は王城内にある。
薄い水色を基調とした部屋で、白い家具が上品さを際立たせている。どこぞのお嬢様の部屋のようだ。
「失礼します。とても明るくてシックなお部屋ですね」
「いや~ん、ありがとう。団長室ってむさいイメージしかないじゃない? ちょっと変えたのよ~」
ちょっとって、あなた。これは大改造したよね? ウチと大違いなんですけど。
「センスがとても良くいらっしゃる。羨ましいです」
「そう? ラモンも自分の好きなように変えれば良いのよ。だって、自分の執務室よ。一日の大半居るんだから心地よさを重視した方がいいわよ」
「ははは。そうですね、追々やって行きます」
今はそんな余裕はない。てか、私財でこれだけ用意はまず無理だな。ユーグさんって上位貴族なんじゃない? 聞くのが怖いよ。私はなんせ貧乏子爵だし。
「ふふふ。それより、さっきは第六に言い返していたじゃない。見直したわ」
「あ~。言い返せていたかどうかは… 少しは溜飲が下がったかも知れないですが、まだまだです」
「いいえ、言い返したのがすごいのよ。しかもあいつでしょう? みんな心の中では見直したと思うわよ」
「それなら、少しは成功でしょうか?」
「成功? あぁ、そうね。団長としては合格ね」
ユーグさんはウィンクしたあとお茶を勧めてくれた。
「それより、これからね。第七でやって行けそう?」
「そうですね。皆、比較的協力的ですし、何よりドーンが居ますので」
「そう? 団長同士、何か手助け出来ればいいんだけど? 何かある?」
ん? ユーグさん、こんなに親切でちょっといいの? 初対面だよ?
う~ん。あんまりガツガツ行かず様子見する?
「では、今までの第七の印象など教えて欲しいです」
「今までねぇ~。今までは左遷先? って言うの? プライドや爵位は高いけど中身がないやつをお飾り的に送ってはクビにするって感じかしら? 第七の子達って貴族にアレルギーがあるのか、決まって団長を干しにかかっていたわ」
「貴族アレルギーですか? 初めて聞きました」
「ふふ。何ていうか、第七の団長になるやつって貴族を鼻にかけたり、給料だけぶんどってふんぞり返ってたりね。仕事が出来ないって言うより、しないやつばっかりだったの。それに平民騎士が多いでしょう? それも踏まえて貴族に対して変な見方になっているのは確かよ」
仕事しない上司。部下にしたら悪夢だね。それがずっと続いていたのか…
「それは… 第七の騎士達は不びんでしたね。そっかぁ」
「不びんって… あなたも貴族の端くれよね? 第七って聞いて嫌じゃなかったの?」
中身はこの世界に生まれたての異世界人です! とは言えない。
「元々は中位騎士になりたてで、爵位も低い貧乏貴族ですので。それに第七に関しては『ややこしいらしい』としか噂でしか耳にしませんでしたから」
「確か、第二に居たのよね?」
「はい。城下町の警備です。城門とは近いようで接点がなかったので」
「そっか… ラモンは第二出身か。じゃぁ、さっきケインがヤキモキしていたのはそのせいね。ふふ」
「ケイン団長ですか?」
そう言えば、さっきの会議室で目は合ったけど特に話したりしてないな。団を移籍してから一回も会ってないような…
「ラモン、ケインよ。今はもう同じ団長なんだから」
「そうですね… すみません。格上の方達ばかりなので慣れなくて」
「ラモンが第六とやり合ってた時に、ケインがハラハラしてたのよ。ぷぷぷ、父親みたいだったわ、あのゴリラ」
「ゴリラって。そうですか、今度挨拶して来ます。うれしい事を教えて下さりありがとうございます」
「素直でいいわね~、はぁ~。でもこの先心配になるわね、この純真さが」
私が??? になっているとドーンが一歩前に出た。
「ご歓談中失礼します。ユーグ殿、そこは私が居ますのでご心配なく」
「おっと、そうだったわね。ドーンが居ればそこら辺の雑魚は問題ないわね。何せ『稲妻ブレーン』様だものね?」
『稲妻ブレーン』!!! 何じゃそら?
「ぷっ! 稲妻ブレーン! 何その二つ名!」
笑っちゃいけないが、笑ってしまう。い、いなずまぶれーんって。
「そこ笑う所じゃないわよ、変な子ねぇ。この通り名は字の如くよ。稲妻のように瞬く間に作戦を思いつく、戦場で即座に対応する騎士団の頭脳に付いた名よ? とっても名誉な名なのよ!」
「そ、それはすごいですね。ドーンのありがた味が増しました。ぷぷ」
「もう! ちゃんとわかってるの? ドーンを頼りにするのよ!」
「それは重々。今では無くてはならない存在ですので」
ドーンは私が笑った事などお構いなしに、ニコニコしている。
「ドーンも大変ね。この子のお世話」
「はい、毎日が楽しくて仕方がありません」
「ふ~。この上司にしてこの部下か… 陛下はどこまでお見通しなのかしら」
「それは神の采配かと」
「ふふふ、言うわね。あなた陛下のこと嫌ってなかった?」
「はて? 陛下を嫌うなど、畏れ多い事ですな」
「ふん、狸ね」
二人の大人な会話を余所に、私はスイーツを頬張る。
今、話に入ったら火傷しそうで怖い。だって、二人共顔が笑ってても目が笑っていない。途中から寒気がし出したしね。
もぐもぐもぐ。もうね、両頬を膨らませたリス状態だよ。
私は何も知りませんよっと。